ノルウェイの森/村上春樹 を読んで


中学校の時にこじらせて買って以来読んでなかったのですが、久々に読んだらとても面白かったんですね。
なんというか、僕は普段小説にのめり込む、ていう経験をめったにしてなくて、それというのも初心者のくせに頑張ってヘッセやらカフカやらジョイスやらベケットやらに手を伸ばしていたからなんですが、村上春樹の文体は平易でわかりやすくて良いですね。また、内容も日本人の大学生を巡った物語になっていて、とても感情移入がしやすくて良いです。やはり、自分にあった本を自分にあったペースで読むことが大切だと痛感します。そもそも本を読む=偉い!みたいな価値観ってあくまで他者からの外発的動機づけなのですが、外発的動機づけはもともと内発的動機から物事を行っている人のやる気を削ぎやすいという研究がなされています。
勿論本を読むことの大切さを教えながらも、本を読んでる!すごい!かっこいい!みたいなことをうかつに言い過ぎると、僕のように本嫌いの子がかえって増えるんじゃないかなぁ、と思います。
とにかく、小説読みたいなぁ、と思わせてくれる本にあったのは久々でした。思えば苦行のように本を読んでいたので、こうやって本来読むものだよなぁとしみじみ思いました。

内容には全く関係ない話になってしまいましたが、内容も本当にとてもよく練られています。わかりやすくも何が起こっているのか、また一見意味のわからない出来事が何を意味しているのかを考えながら読んでいくのはとても楽しいものでした。昼間っから主人公らが酒を飲んでるのもなんだか自己投影してしまいますね(笑)。
途中途中で演奏されるギターの曲が個人的にツボを抑えてて良い感じでした。

なんだかものすごく浅い感想になってしまったのですが、ノルウェイの森に関する考察はかなりいろんなところでなされているので、ここでは割愛します。

(以下ネタバレです)










かわりにここでは、直子の病気について焦点を当て、心理学の面か簡単に考察し、どうすればバッドエンドを迎えずにすんだかを考察してみましょう。

さて、直子の病気に関してですが、本文中では精神が引き裂かれる病、と表現されています。ここからは文字通り精神分裂病、つまり現在における統合失調症だと思います。
統合失調症の症状は大きく陰性症状と陽性症状に分けられます。陽性症状が妄想、幻覚、興奮などの症状で、陰性症状では抑うつ状態となり、精神的に不安定な時期を送ることになります。症状としては、描写されていた直子の状態にまぁまぁ一致していると思います。また、容態が途中で急変したのも、統合失調症の急性期に再び入ったと考えるのが妥当ではないでしょうか。
さて、統合失調症の原因としては、遺伝的要因に加えて、環境の変化などからくる精神的なストレスから発症するとされています。また、元々の性格も影響し、内気でおとなしく、非社交的、などの一定の性格傾向があると言われています。さらに直子は、キズキというパートナーを亡くしており、遺伝のような生物学的要因、そして性格傾向という心理学的要因に加え、その社会的要因が発症の原因であったのではと考えられます。
治療法ですが、現在では抗精神病薬の投薬とともに、認知行動療法などの心理療法を行い、さらに社会復帰のリハビリを行う、という流れが主要になっています。

さて、本題に入りますが、結局阿美寮での普通に処置が悪かった気がしてなりません。然るべき心理療法を行って、ちゃんと投薬していれば、普通に自殺する必要なかったのではと思います。
精神が死者の世界と生者の世界で引き裂かれ、主人公の生者世界での生き残りを緑の存在を知って、もう大丈夫だと思い死者の世界へと旅立った、みたいな考察をなさっている方がいて、本当に素敵な解釈だと思ったのですが、直子が統合失調症だと仮定したら、普通に治療方法が悪く、急性期に入って自殺した、という流れなのでしょう(面白みもへったくれもありませんが…)。

僕の好きなバンド、ニルヴァーナのフロントマン、カートコバーンもこの病気で自殺したと言われています。精神疾患の方の自殺率はそうでない方に比べて有意に高いです。しっかりした治療と周囲のサポートが求められる次第です。


ごっぴ