シェイマスマコール,小野修訳「アイルランド史入門」をよんで

僕は一月からアイルランドに留学するのですが、そこでアイルランドの歴史についての授業を取ろうかと思っています。そうした中で、アイルランドの歴史について最低限の事は知っておきたいと思って読んだ一冊です。


思えば、アイルランドの歴史を現地で学ぶというのは、少なくとも前提条件であるアイルランド人にとって常識的な歴史に関する知識と、語学力の二つの大きな障壁があるわけです。


後者はともかく、前者に関してはなんとか日本で知識をつけておきたいので…


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この本は、二部構成になっていて、第1部では日本でいう縄文時代あたりから現代までのアイルランドの歴史を、第2部では北アイルランド紛争に関して、それぞれ百ページほどにまとめています。


第2部の北アイルランド紛争に関しては、現在はご存知の通り和平条約が締結され、またIRAの活動もおさまっていますが、この本が書かれた時はまさにその抗争真っ只中。二つの北アイルランドに関するエッセイを読んでも、抗争が日常としてあるその陰鬱な情景が目に浮かぶようでした。


ここでは、特に僕が興味を持っている第1部のアイルランド史について。


世界史を勉強した人なら誰しもが思うように、歴史上イギリスは暴虐の限りを尽くしてきた訳ですが、おそらく隣国という理由で、その被害を最も受けた国の一つとなってしまったアイルランド


この本では、アイルランドが度々イギリスに翻弄され、侵略された、その歴史を知ることができます。

この本を読むとアイルランドのイギリス嫌いの理由がわかるというものです(もちろん、それを今後も持ち続けて行くべきとは思いませんが)。


ただ、7.8世紀ごろまでは、むしろアイルランドからイギリス、特にスコットランドの方に植民が行われていたというのは興味深かったです。


それ以降ノルマン人の侵略とともに逆転し、11世紀頃からは本格的にイギリスに植民地化されていたアイルランドの、抵抗の歴史を読むことができます。



一方で、残念だったのは、この本が政治史に終始しており、文化史的な側面が弱かったことです。どうしても文化に興味のある人間なので、そちらについても描いて欲しかった…。


また、これはアマゾンのレビューにもありましたが、アイルランドの歴史について短くまとめてしまっているためか、はたまた翻訳の稚拙さのためか、よくわからない記述がいくつかあったことです。


また、アイルランド人にとっては前提となる知識が欠如しているため、どうしても説明不足に感じてしまう部分もありました(ある程度は注釈でカバーされてますが)

やはり、元はアイルランドら人のための、アイルランド史入門なんだなぁ、とひしひしと感じました


なんにせよ、中々アイルランド史に関する本自体中々ないので(うちの大学にも)、この本に関してはもう一度じっくり読んでみたいです。


ごっぴ