丹野義彦「イギリスこころの臨床ツアー 大学と精神医学・心理学臨床施設を歩く」を読んで

丹野義彦「イギリスこころの臨床ツアー 大学と精神医学・心理学臨床施設を歩く」を読んで



イギリスの大学や精神病院など、心理に関わるスポットを紹介していく本。その一方で、こころの臨床ツアーと銘打ちながら、大学に関しては他学部の説明や、大学のある街の説明なども入っているので、地球の歩き方を読んでいるかのように楽しめます(実祭アマゾンのレビューにもそのような表現がありました)。


私が面白いと感じたのは、オックスフォードやケンブリッジロンドン大学はもちろんのこと、グラスゴー大学や、果てには北アイルランドベルファストにも足を伸ばしてくれていたことです。

イギリスが心理学(自分の興味ある分野だと、特に認知行動療法の普及)に関して進んでいることは知っていました。しかし、音楽柄、またアイルランド留学のこともあり、周辺域ではどのように発展していて、どのような施設があるのか、と少し気にしていたので、とてもありがたかったです(一方で、北アイルランドに関する説明が他学部の有名人の説明や大学歩きに終始していたのを見て、やはり本土の大学には敵わないか…と感じたりもしました)。


イギリスに関しては、やはり特にオックスフォード、ケンブリッジの両大学に関する説明、そして両大学の輩出した、クラーク(イギリスの認知行動療法、不安療法の第一人者)やフェアバーン(摂食障害研究の権威)などの著名な心理学者に関する説明もあり、まるで実際に大学を歩き、教授と会っているかのような擬似体験のできる本でした(実際に著者自身のそのような体験を書き起こしたものなので、当然といえば当然かもしれません)。当然のことながら、大学の発展や、心理学科の歴史や概要の記載があるのも、同じ心理学を専門とする者としては興味深いです。


大学のキャンパス内の建築物やクアドラングル(中庭)、果てには観光名所まで、まさに地球の歩き方的な側面からの記述や写真もあるので、実際に訪れてみたいという気持ちも高まります。



一方でですが、街自体や他学部、それに建築物の歴史や概要に関しては、章によっては少し冗長であった気がします。前述のように書くことがなくて仕方ないからかもしれませんが、特に北アイルランドに関する記述ではそれが顕著であった気がします。皮肉なことです。


ごっぴ